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宮城県。再エネ設備建設による森林伐採・破壊を防ぐ開発抑制のための新税(法定外税)案の税率を「営業利益の2~3割」とする緩和案提示。事業者の手に残るのは営業利益の4割前後(各紙)

2023-02-18 00:59:04

miyagiキャプチャ

 

 宮城県は17日、再生可能エネルギー施設の所有者に課す方針をの新しい法定外税の税率について、事業者の営業利益の2〜3割程度の水準にする案を有識者会議に示した。1月に提示した3~4割案より緩和したが、それでも事業者は別途、法人税、法人住民税、法人事業税等を合わせると利益の6割前後を税金として国や自治体に納めることになる。事業者の手元に残るのは4割程度。同県の狙いは、再エネ奨励ではなく、森林開発を事業者に抑制する点にあるため、税負担の重さを重視する形だ。

 

 (写真は、17日に開いた宮城県の有識者会議=日本経済新聞から)

 

 日本経済新聞等の報道によると、宮城県では、6月議会にも条例案の提出を目指しており、それまでに具体的な課税水準を決める方針。課税の骨子素案では「再エネ事業者に強く行動変容を促す観点からは少なくとも20%の水準が求められる」とする一方、他の税負担もあることから「おおむね30%程度が上限」とした。

 

 課税対象の再エネ事業は、風力、太陽光、バイオマスの発電施設で、それぞれの所有事業者が納税負担者となる。森林開発面積が0.5㌶以下の小規模開発の場合は対象外とする。課税額は施設の出力と、再エネの種別ごとに定める基準税率を掛け合わせて算出する。営業利益は売電収入から減価償却費と保守点検費などを引いたもので、課税率は営業利益の2〜3割を目指す方針だ。

 

 前回、1月19日の有識者会議で県は、課税率の見通しを営業利益の3割と4割の2パターンを示した。この場合、他の法人税等を含めると、営業利益のほぼ7割を納税し、事業者の手元に残るのは3割ほどになる計算だった。このため、有識者会議座長(田中治・大阪府立大学名誉教授)が「せめて(江戸時代の年貢率の)五公五民あたりが妥当ではないのか」と指摘した。https://rief-jp.org/ct5/130312

 

 今回の修正提案は、前回よりも、ほぼ1割ずつ、課税率を緩和した形だが、それでも、高課税率であることには変わりはない。高い税負担を課して、事業者の開発意欲をそぎ、非課税の再エネ促進区域での再エネ設備の設置に誘導するのが県の狙いであるため、「五公五民」では間に合わない、というのが県の考えのようだ。

 

 ただ、事実上、再エネ設備「禁止」につながる税率だと、事業者の反発だけでなく、地方税としての妥当性という点で、総務省との調整が必要になる。自治体が独自の条例を定めて課す「法定外税」の場合、総務省の同意が必要となるためだ。先行する形で、太陽光パネルへの課税条例を成立させた岡山県美作市は、23年度の導入を目指したが、県内で事業を推進する事業者側が猛反発したことから、総務省は協議不十分として、昨年6月に市に対して、事業者側と再協議するよう異例の通知を出し、宙に浮いた形になっている。https://rief-jp.org/ct5/121082

 

 森林保全・乱開発防止と、再エネ促進の両方の「ウサギ」を追い求めるには、保全地域への課税強化は一つの策だが、同時に、再エネ促進地域については、単に非課税にするだけなく、もっと優遇案(補助金の付与、法人住民税や固定資産税等の免除等)を提供して、「ウサギの誘致」を図る案も考えられる。せっかく、「有識者会議」を設けてているのだから、参加委員からも、知恵を出してもらってはどうか。役所の腹案にイエス、ノーをいうのが有識者ではないはずだ。

 

 報道では、有識者会議の場で、参加委員から「過剰な税負担にしないと(森林伐採の抑制という)目的は達成できない」として県の方針を支持する意見のほか、「規制的な役割を税に担わせるのは、税制の観点から賛成できない」との意見も出たという。税や補助金を、環境や社会課題の解決・緩和手段に活用することは欧米では通常の政策であり、「賛成できない」という委員は、代わりの政策を提案するべきだろう。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC173E60X10C23A2000000/?type=my#AAAUAgAAMA