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フランス。鉄道で2時間半以内の国内近距離航空便の廃止、コロナ禍等で、2年遅れで実施。次の焦点はプライベートジェット機の排出規制(RIEF)

2023-05-26 14:17:06

Airplaneキャプチャ

 

  フランス政府は、航空機からのカーボンフットプリントを削減するため、陸路の高速鉄道で2時間半未満で行ける地域での国内短距離航空便の廃止を正式に決めた。短距離航空便の「廃止法案」は、2021年に議会で成立しており、新型コロナウイルス感染の影響や、代替鉄道輸送の調整作業等で2年遅れで政令を公布、施行した。今回の規制の対象にはプライベートジェット機は含まれないが、仏運輸省は同機に対する新たな規制を24年にも適用するとしている。フランスの規制を日本に適用すると、新幹線が頻繁に走る東京ー大阪間の航空路線は廃止対象に該当する。

 

 政令は23日付で施行された。近距離航空便の廃止法案は2年前に成立していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、航空業界が経営不振に陥ったこと等も考慮し、規制の実施が先延ばしになっていた。https://rief-jp.org/ct8/113038?ctid=

 

 対象は国内航空路線のみ。代替となる鉄道便が整備されていることが条件となる。首都のパリからでは、ナント、リヨン、ボルドー等へのフライトが該当する。ただ、パリ経由ボルド―等の経由便については適用しない。

 

 代替鉄道便は、航空機の路線と同様の都市間を2時間半以内で結ぶ鉄道便とし、過去7年間の同区間の航空便での平均乗降客数を確保できる輸送容量が求められる。鉄道便は「適正な利用価格」で、かつ、乗り換えなしでの直行便が常時、複数、走行している必要がある。

 

 日中の鉄道の走行スケジュールは、鉄道利用者が到着地で8時間以上の滞在後に、当日のうちに鉄道で乗車地にまで戻れる便数の確保等も条件としている。また到着地からの接続便の確保、旅行シーズン前には、運輸省が各航空・鉄道路線の混雑状況に配慮して対応する等の措置を盛り込んだ。

 

 航空機からのCO2排出量は、世界全体で年間9億㌧以上で、グローバルな排出量の約2%を占める。排出量が年々、増加しているセクターでもある。このため、国際航空運送協会(IATA)も現在の各航空会社による排出削減目標は、ネットゼロを実現するには不十分として、持続可能な航空燃料(SAF)の使用や、水素電源航空機等の普及を奨励している。

 

 今回の規制の実施に際しては、コロナ禍でグローバルに航空機利用が減少、経営危機に陥る航空会社も出た。こうしたことから、複数の航空会社が欧州委員会に対して、法的整合性を求める動きをするなどの局面もあった。だが、マクロン政権の温暖化対策の象徴的な意味合いもあり、コロナ禍を超えた段階で、予定通りに実施された。

 

 運輸相のClément Beaune氏は、法施行の実施について「われわれは、GHG排出量削減のための重要なステップを踏み出した。今回の措置は、政府が主導する、より汚染の少ない輸送モードの使用を促進する方針に沿ったものだ」と強調した。

 

 業界団体や環境NGO等からは、同規制が「シンボリックな規制」として位置付けられるのか、それともネットゼロに向けた一つのステップとなるのか、という点で議論が分かれているようだ。前者の視点に立てば、法施行でフランスはEU内で近距離航空便廃止のリーダーとなり、とりあえずの成果を得た形となる。後者の立場なら、次のステップとしてプライベートジェット機の効果的な排出規制、航空機全体のネットゼロ戦略の強化等、効果的な追加策を打ち出すことになる。

 

 航空便のネットゼロを実現するには、SAFを混焼したジェット燃料の使用だけでは不十分で、電動航空機、水素エンジン等の航空機本体の「脱炭素化」が求められる。

https://www.legifrance.gouv.fr/jorf/id/JORFTEXT000047571222