HOME6. 外国金融機関 |米連邦準備理事会(FRB)、シティバンク等米銀大手6行を対象に、気候リスクによる投融資ポートフォリオへの影響を評価するパイロット版シナリオ分析への取り組みを指示(RIEF) |

米連邦準備理事会(FRB)、シティバンク等米銀大手6行を対象に、気候リスクによる投融資ポートフォリオへの影響を評価するパイロット版シナリオ分析への取り組みを指示(RIEF)

2023-01-24 00:07:39

FRB001キャプチャ

 

 米連邦準備理事会(FRB)は17日、大手米銀のBank of AmericaやCitigroup等の6行を対象に、気候変動が各行の投融資ポートフォリオに及ぼす影響を評価する初のパイロット版のシナリオ分析の概要を公表した。パイロット版では、2050年ネットゼロシナリオを含む複数のシナリオ下で銀行の保有不動産が被る物理的リスク評価のほか、現行の政策及びネットゼロ目標シナリオの場合に、企業向けローン等が受ける移行リスクのインパクト等を検証する。各行は7月末までに検証データをFRBに提出する。


 (写真は、FRBの理事会の模様=FRB photo galleryより)

 

 FRBは昨年9月に、6大米銀を対象とした、気候リスク分析の実施を公表している。今回はその「パイロット版事業」となる。パイロット事業に参加するのは、JPMorgan Chase、Bank of America、Citigroup、Goldman Sachs、Morgan Stanley、Wells Fargoの6行。銀行経営に及ぼす気候リスクの影響を検証する気候シナリオ分析には、欧州中央銀行(CB)等がすでに取り組んでいる。https://rief-jp.org/ct5/128296

 

 FRBは先に、米銀だけでなくグローバルな金融システムの安定に不可欠とされる大規模銀行(G-SIB)30行の気候行動計画を検証・分析するレポートを公表している。今回、そうしたG-SIBの全体像を踏まえ、金融システムへの影響力の大きい米銀6行を対象としたシナリオ分析に取り組む。https://rief-jp.org/ct6/131470?ctid=71

 

 パイロット事業では各銀行が保有する資産ごとに、物理的リスクと移行リスクという2つの気候リスクの影響度を複数のシナリオごとに検証する。まず、物理的リスクシナリオでは、米北東部で各行が保有する住宅用、および商業不動産に影響を及ぼす度合いをシナリオごとに分析する。さらに各行ごとに、他の地域での不動産ポートフォリオに対する追加的な物理的ショックのインパクトも検証する。

 

 移行リスクのシナリオ分析では、現在の米国の気候政策に基づく場合と、2050年までにネットゼロを実現するための政策に基づく場合とをシナリオを使って、企業向けの融資や商業用不動産ポートフォリオに及ぶインパクトを評価する。評価に用いるシナリオ分析は、影響の予測や政策評価ではなく、気候関連の金融リスクに及ぶ影響を理解するために活用するとしている。

 

 また、今回のパイロット版では、各行の気候リスクマネジメント実務に対する理解を深め、保有不動産資産の気候関連金融リスクの把握、測定、モニタリング、マネージ等の能力向上を目指す。銀行の投融資ポートフォリオの気候関連金融リスクを測定、管理するための銀行自身の能力と、金融当局の監督能力を高めることも目指すとしている。

 

 6行がそれぞれ実施するシナリオ分析の結果は、個別行ごとには開示せず、年末に6行全体をまとめる形で公表する予定としている。また、今回のシナリオ分析の目標については、銀行の気候リスク耐性を検証するストレステストとは別の扱いとしている。ストレステストの場合は、銀行が厳しい状況に陥った場合に企業や家計に投融資を継続できるかどうかを確認するものだが、気候シナリオリスクは銀行の投融資資産への気候リスクの影響を評価するものとしている。

 

 FRBの金融監督担当副議長のMichael S. Barr氏は「FRBは気候関連の金融リスクに対して、限定的だが重要な責任を負っている。それは、各銀行が気候変動による金融リスクを含む重要なリスクを理解し、マネージすることを確実にすることに資する。今回のパイロット事業は台頭する気候関連金融リスクを分析し、マネージするための我々金融監督当局と銀行の能力を高めることになるだろう」とコメントしている。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/other20230117a.htm