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ロシアのプーチン大統領、サハリンⅠについても新会社に権益移管を指示。現在、同事業に出資している日本政府(経済産業省)主導の官民連携会社の対応が焦点に(各紙)

2022-10-09 09:21:20

saharin1キャプチャ

 

  各紙の報道によると、ロシアのプーチン大統領は7日、サハリンⅠの石油・ガス開発で、現在の事業を新設する会社に移管する大統領令に署名した。すでにガス開発のサハリンⅡについても、同様の措置を講じており、それに続く。今回のサハリンⅠには経済産業省が出資する日本の官民連携企業も出資しており、ロシアの新会社に出資すると、ロシアに対する西側の経済制裁との整合性を問われる可能性がある。

 

 (写真は、サハリンⅠのChaivo油田のサイトの一部=ロイターから)

 

 サハリンⅠは、米エクソン・モービルが主導する形で開発を進めてきた。だが、ロシアのウクライナ侵攻後、同社は経済制裁に基づき事業からの撤退を表明。石油等の生産は大きく減産している。ロイター等の報道によると、新たな大統領令では、事業を引き継ぐ新会社が従来の運営主体からすべての権利を引き継ぐことになる。

 

 これまでの運営主体には、エクソンが30%、日本政府や伊藤忠等が出資するSODECOが30%、ロシア国営石油大手ロスネフチが20%、インドの石油天然ガス公社が20%の権益をそれぞれ保有する。エクソンにとって、ロシアに保有する唯一の石油生産資産。日本のSODECOの出資の内訳は、経産省50%、伊藤忠商事18%、石油資源開発14%、丸紅12%、INPEX6%。

 

 サハリンⅠはサハリン島北東沖の海上で3カ所の鉱床で石油・天然ガスを開発生産している。1995年に、ロシア政府が西側各社と生産物分与契約(PS契約)を契約、2005年から生産が続いている。

 

 日本経済新聞の報道では、SODECOに参加する伊藤忠商事は「現在、事実関係を確認中。日本政府や他パートナーと連携し、適切に対応する」。丸紅は「状況を注視しつつ、今後の方針については関係者と協議の上、適切に対応していく」とコメントしているという。一方、経産省のコメントは紹介されていないが、経産省はこれまでサハリン1の権益を維持する方針を掲げてきた。同省は、エネルギー安全保障を重視して、ロシアでの権益は重要との見方を変えていないとしている。

 

 すでに、ガス開発事業のサハリンⅡについては、ロシア側は同様の手法で、新会社に移管されており、日本の出資企業である三井物産と三菱商事も新会社に新たに出資している。https://rief-jp.org/ct10/127915?ctid=72 https://rief-jp.org/ct10/127746?ctid=72

 

 経産省はサハリンⅠについても同様の対応を目指しているとみられるが、日本政府が国として、プーチン氏の大統領令を受けてサハリンⅠを支持することになると、西側の経済制裁の足並みを乱す形にもなる。ウクライナ情勢が、微妙に変化しつつある中で、日本政府がロシアの指示に従う形で、同国のエネルギー開発を支援することに国際理解が得られるかが課題だ。https://rief-jp.org/ct4/127619?ctid=72

 

 すでに日本の石油元売り大手はロシアからの輸入を止めている。サハリンⅠで生産する原油は、液化天然ガス(LNG)等のガスよりも国際市場が大きく、サハリンⅠの原油輸入を止めている現在でも、市場等からの代替調達ができている。このため、日本政府がウクライナ支援を重視して、権益を手放しても、日本経済が原油不足から経済活動や生活に大きな影響が出る情勢にはない。

https://www.reuters.com/world/europe/russias-putin-signs-decree-setting-up-new-operator-sakhalin-1-tass-2022-10-07/