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週末の広島G7サミットを前に、アジアのNGOが、日本がアジアで展開する「日本版トランジションファイナンス」の危険性を強調。「日本の企業と金融機関のためだけの事業」と批判(RIEF)

2023-05-15 23:43:38

FCCJ002キャプチャ

 

 今週末に広島で開くG7(主要7カ国)首脳会議を前に、アジアの環境NGO代表が来日、日本が官民で化石燃料エネルギーを温存する「トランジションファイナンス」をアジア各国で展開しているとの抗議の声をあげた。日本政府は昨年、日本以外のG7諸国からの強い要請を受け、海外での石炭火力事業への公的支援停止や事業縮小を発表した。ところがNGOらによると、その後、日本の官民は、これらの事業をアンモニア混焼やCCS導入等で「トランジションファイナンス」対象と位置付け、「日本の企業と金融機関のためだけの事業」(NGO)として化石燃料利用を継続しようとしているという。

 

 来日したのは、バングラデシュの「湾岸環境アクションネットワーク代表理事」のサルミン・ブリスティ(Sarmin Bristy)氏、インドネシアの「エネルギー・生態系と開発センター 」代表理事のジェリー・アラセンス(Gerry Arances)氏、フィリピンの「フレンズ・オブ・ザ・アース・インドネシア」の空間計画インフラ担当キャンペーンマネージャーのドゥイ・サウン(Dwi Sawung)氏の3氏。3氏と「Oil Change International」の金融キャンペーナーの有馬牧子氏が、15日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見した。

 

 日本政府は昨年6月のドイツでのG7サミットの直前に、バングラデシュのマタバリ2と、インドネシアのインドラマユの両石炭火力発電事業に対する政府開発援助(ODA)支援を中止すると発表した。G7諸国で唯一、途上国向けの石炭火力事業への公的ファイナンスを継続する日本に対して、他のG7諸国がサミットの前に見直しを強く要請したことを受けての対応だった。さらに昨年11月にはインドネシア・ジャワ島で丸紅主導で運営しているチレボン1石炭火力発電事業の操業短縮を打ち出した。https://rief-jp.org/ct5/126006?ctid=75 https://rief-jp.org/ct10/130076?ctid=75

 

 これらの措置で、日本の官民主導のアジアでの石炭火力発電事業は、収束に向かうとみられていた。しかし、15日に会見したNGOらは、日本は石炭火力発電事業の「延命」のために、「トランジションファイナンス」としてアンモニア混焼、CCS導入、LNG発電への切り替え等を展開し、化石燃料エネルギー発電を温存、アジアの再生可能エネルギー発電への転換を抑えようとしていると批判した。https://rief-jp.org/ct5/133205?ctid=

 

 バングラデシュのブリスティ氏は、同国に豊かに存在する自然資源活用する再エネ発電で国内電力需要を2050年までに100%まかなえるとするが、同国政府のエネルギー政策支援を担当する日本の国際協力機関(JICA)は発電量の約3割をアンモニア混焼による石炭火力発電とする支援策を打ち出しているという。さらに現在の電力価格の3倍にもなるLNG火力も推進している。

 

 同氏は「これらの化石燃料温存のエネルギー計画は、バングラデシュのような途上国にとって、大きな経済的負担につながる。にもかかわらず、バングラデシュ政府は化石燃料発電をさらに増設しようとしている。現在の政府計画での石炭火力発電量は、将来の必要発電量を5割も上回る」と指摘。マタバリ2の事業継続は中止したが、建設中のマタバリ1は2024年にも稼働の予定で、「エネルギー主権を(日本ではなく)自分たちの国に取り戻したい」と訴えた。

 

 インドネシアでは丸紅系が主導するチレボン1の操業短縮が示された。だが、実際の短縮期間は2042年に予定される運転終了期間を「5年ほど」早く終えるものとみられている。同発電所より約5倍増の発電規模(1000MW)を持つチレボン2は今月から操業が始まる予定という。インドネシアのNGO、サウン氏は「チレボン1も、操業をいったん止めた後、燃料をアンモニア等の混焼に代えるか、あるいは天然ガスやバイオ等で、運用するのではないか」と懸念を示している。

 

 日本の官民が、国内で推進する「日本版トランジションファイナンス」によるグリーントランスフォーメーション(GX)構想をアジアにも輸出し、アジアの化石燃料エネルギーシステムを温存する狙いでは、との警戒を示す。「(日本の政策変更によって)石炭火力がなくなったわけではなく、(アンモニア混焼やCCS、水素等の利用で、姿が)変わるだけ」(サウン氏)とみている。https://rief-jp.org/ct7/128568?ctid=

 

 フィリピンのアランセス氏は「日本の政府が『エネルギー安全保障』として提示するアンモニア混焼やCCS、LNG発電等は、環境汚染を今よりも高めるもので、dirty(汚く)、deadly(命を危うくし)、high expensive(高額)なエネルギーだ。それらを、『トランジション』の名の下に、われわれに押し付けようとしている。その理由は、ただただ、日本の企業と金融機関のためになるというものだ」と指摘した。

 

 さらに、フィリピンで「海のアマゾン」として知られるヴェルデ島海峡(The Verde Island Passage: VIP)の豊かな海洋生態系地帯に、日本の国際協力銀行(JBIC)と大阪ガスが出資者となってフィリピン・バタンガス州のイリハンLNG輸入ターミナル事業を展開しようとしていることにも強い批判を示した。

 

 続けて同氏は次のように述べた。「気候変動の一番の犯人は、G7諸国だ。これらの国々は、気候変動に対して歴史的な責任を負っており、その対応のためには解決に向けた『野心』のレベルを高く持つ必要がある。日本はG7の中でも遅れてきた国だが、アンモニア混焼やCCS、水素、LNG等で化石燃料エネルギーを温存することを、直ちにやめ、100%再生可能エネルギー達成に向けて歩を進めてもらいたい。広島は『第二次大戦の終結を決めた場所』と言われる。今回の広島サミットの後に、『良い旅路』が始まることを期待したい」

https://priceofoil.org/tag/japan/

https://fossilfreejapan.org/ja/